口元の形態について|長浜市、米原市の歯科医師会「一般社団法人湖北歯科医師会」

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歯は友コラム

咬合育成歯科治療

口元の形態について

近頃、口ボコという言葉を耳にすることがあります。調べてみると、顔を横から見た状態で、唇がE-line(鼻の先と顎の先の接線)より前方に位置している状況のことであると説明されております。下図のようにE-line(赤線)上に上下の口唇が位置しているのが望ましいとされています(図1)。E-lineはアメリカの歯科医師ロバート・リケッツにより定義された指標で、近年になっても研究がなされております。


図1(赤線はE-line)

口ボコという言葉は、病態としては、上下顎前突と言われる状況のことだと考えられます。インターネット上では美容整形であるとか、歯科治療など、さまざまな治療方法が提示されております。歯科では横顔を3種類に分類して考えます。出っ歯よりの骨格に多い前突型、骨格の調和が取れている場合に多い直線型、受け口よりの骨格に多い陥凹型です。(図2)


前突型   直線型   陥凹型
図2 William R .Proffit、Contenporary orthodonticsより引用

この3つの分類は、骨格系に強く影響を受けるもので、一般に言われる口ボコはそれぞれに生じる可能性があります。日常的に臨床で多く見受けられるのは、前突型で口元が出ているという症例です。今回は特に前突型の症例について説明をしようと思います。

前突型の側貌では、オトガイ(あごの先端)が唇に対して後ろの方に位置してしまいます。結果的にE-lineも後方で引くことになり口元が相対的に出ている状況になってしまいます。(図3)


図3 E-lineより口唇が前突している。

前突型の側貌を呈している場合、どうすれば口元の突出を解消できるのでしょうか?治療方法は色々考えられますが、ここでは2つの治療法を説明します。1つ目は前歯を後ろに下げる方法です。歯を数本抜いて、その隙間を閉じることで上下の前歯を後ろに下げる事ができます。前歯が下がるのと同時に、上下の唇が後ろに下がって口元がE-lineに近づきます。(図4)

図4 前歯が後ろに下がり唇が後方へ移動した。

2つ目は下あごを前に出す方法です。外科的な方法で下あごを切り、下あごを丸ごと前方に出します。(図5)この方法では、前突型の側貌自体を変化させ、E-lineを前方へ移動する事が可能です。1つ目の方法に比べて、大掛かりにはなりますが、口元はよりE-lineに一致しやすくなります。


図5 手術により、下あごを前方へ移動した。

今回は、口元の治療法のなかで、特に口元の突出感の解消方法について説明しました。これらの病態は、健康への影響はそれほどなく、どうしても必要な治療というわけではありません。また、E-lineは欧米で提唱された指標であり、欧米人に比較すると、鼻が低く、オトガイの発達が弱いアジア人ではどうしてもE-lineより口唇が出てしまいがちです。多少出っ張っているからと言っても、あまり気にする必要はないかもしれません。そうは言っても気になるし、どうしても治したいという方は最寄りの歯医者さんにご相談くださるのがよかろうと思います。