歯医者さんで治してもらった銀歯、最近高く感じたことはありませんか?
金属の被せ物や詰め物の治療を受けた後、窓口で治療費の支払いの際に「2,3年前に来た時に比べて、なんかすごく治療費が高くない?」と思われたことはありませんか? 歯医者さんで治してもらうおなじみの「銀歯」。その原料は国が指定した金、銀、パラジウムなどからなる「金銀パラジウム合金」、通称「金パラ」という科学的に安定した合金で作られています。
ところが、本来安価で身近な治療材料である金パラの流通価格が近年急激に高騰してきました。そもそも、パラジウムは主にガソリン車の排気ガス浄化装置に用いられ、近年の環境問題への意識の高まりから世界的な需要が増えてます。またパラジウム産出の約45%をロシア、南アフリカ共和国が40%を占めていますが、南アフリカの鉱山閉鎖による生産量の不足や、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻の影響による供給不足などによって需給バランスが崩れ、市場価格の急騰に拍車がかかっています。
日本の健康保険制度は、全国どこでも平等に安心して受けることが出来る制度です。そしてその治療費は、治療ごとに国が定めた金額が決まっています。ところが、パラジウムの価格上昇を受け、特に2018年頃~2021年の間には、歯科医院側が高い材料を仕入れて、それよりも安い国が決めた金額の治療費で銀歯を作る、ラーメン屋さんに例えれば、1杯のラーメンを作るにあたって材料費だけで1,500円かかるのに、それを国が決めた金額1.000円で販売しなさいという、通常ではありえない制度となっていました。これでは歯科医院での治療が当然成り立ちませんので、頻繁に変動する金属原料価格に対し、それに連動してつど国が適切な治療費を決める仕組みに是正されました。
このように、歯科医院での治療費自体は消費税率アップや物価上昇分なども関係なくこの20年間ほぼ据え置きになっているのですが、窓口で支払う治療費は最近の金属材料の異常な高騰のため高くなっているわけです。「金銀パラジウム合金」に代わる新たな素材を用いた治療も保険対象に取り入れられていますが、どうしても「金パラ」でないと出来ないケースもまだまだあります。今後、国が安定して医療材料を供給できる体制づくりをし、患者さんも歯科医院側も安心して治療を受けられる環境が望まれます。