歯周病の病原菌 その2
歯周病の最も重要な原因である**歯周病原細菌(Perio Pathogens)**について詳しくご説明します。歯周病は単一の細菌によって引き起こされるのではなく、特定の悪玉菌が複合的に作用して発症・進行する多菌感染症です。特に重度歯周炎と関連が深いとされる主要な菌群があります。
歯周病の主要な原因菌
歯周病の進行に関与する細菌は、その病原性や発見された環境に基づいていくつかのグループに分類されています。最も病原性が高く、重度の慢性歯周炎に深く関わる3種類の細菌は**レッドコンプレックス(Red Complex)**と呼ばれています。
1. P. g.(Porphyromonas gingivalis)
ポルフィロモナス・ジンジバリス

最も重要な歯周病原菌であり、慢性・侵襲性歯周炎の主要な病原体です。酸素を嫌う嫌気性菌で、深い歯周ポケット内で増殖します。強力な毒素や酵素を産生し、歯周組織のコラーゲン線維や歯槽骨を直接破壊します。免疫細胞の機能を抑制し、炎症反応を強めて組織破壊を加速させます。
2. T. f.(Tannerella forsythia)
タンネレラ・フォーサイセンシス

レッドコンプレックスの一員で、P. g.と同様に深いポケットに生息する嫌気性菌です。単独では病原性は強くないものの、他の悪玉菌、特にP. g.と共存することで強い相乗効果を発揮し、歯周病の進行を促します。歯槽骨の吸収に深く関与しているとされています。
3. T. d.(Treponema denticola)
トレポネーマ・デンティコラ

らせん状の形をしたスピロヘータの一種で、運動性が高いのが特徴です。強い組織侵入能を持ち、歯周組織内部にまで侵入することがあります。細胞を破壊する酵素などを産生し、歯周組織の破壊に寄与します。
その他の主要な原因菌(オレンジコンプレックス)
レッドコンプレックスの前に病変部に現れ、病変を準備する役割を果たす細菌群は**オレンジコンプレックス(Orange Complex)**と呼ばれています。
1. Fusobacterium nucleatum
フソバクテリウム・ヌクレアタム

歯周ポケットの奥深くで、レッドコンプレックスの細菌が定着するための足場(ブリッジ菌)としての役割を果たします。高い凝集性を持ち、他の多くの細菌と結合して塊を形成し、バイオフィルムの成熟を助けます。
2. Prevotella intermedia
プレボテラ・インターメディア

思春期や妊娠時など、ホルモン変動に伴って増殖しやすいことが知られています。歯肉の出血や炎症が強い時期(急性期)に多く検出されます。
歯周病菌の生態と治療への影響
1. バイオフィルム
歯周病原菌は、歯周ポケットの中で単独で存在するのではなく、バイオフィルムという構造を形成しています。この膜構造によって、細菌は免疫細胞や抗菌薬から守られ、除去が非常に困難になります。そのため、歯周病治療の基本は、抗菌薬に頼るのではなく、スケーリングやルートプレーニングによってバイオフィルムそのものを物理的に破壊・除去することになります。

2. 歯周病と全身の関連
これらの歯周病原菌、特にP. g.は、口腔内だけでなく血管に入り込み、糖尿病、心疾患、動脈硬化、アルツハイマー病など、全身のさまざまな疾患との関連が指摘されています。

このように、歯周病は特定の高病原性細菌によって引き起こされ、それらの細菌が形成するバイオフィルムが病態を難治化させているのが特徴です。

