脱!誤解と思い込み|長浜市、米原市の歯科医師会「一般社団法人湖北歯科医師会」

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脱!誤解と思い込み

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歯や口の中に関しての学問は歯科学といいます。小さな細菌から美容やエステに至るまであらゆる事が研究されています。世界中には何百何千という学会や研究会があり、大学や企業、個人により、日々探求されているわけです。新しい技術の進歩によって新説が生まれ、実験や疫学で証明され、定説となり一般常識となるのです。なかには充分な検証がなされず、新説の段階でマスコミに取り上げられて一般常識化する事もあります。また企業が製品を売るために、新説が拡散される事もあります。今回は、そんな残念な定説が今の研究ではどうなっているの、という事が書かれた「セルフケア指導 脱!誤解と思い込み」(クインテッセンス社)という本を少し紹介してみたいと思います。歯科の専門書なので内容が難しいです。詳しく知りたい方はかかりつけの先生にお尋ね下さい。

1)キシリトールにはう蝕予防に効果がある?
現時点で言える事はここまで!: キシリトールガムなどでのう蝕予防効果は確認されているもの、単独での予防効果についての科学的根拠は乏しい。

某製果会社が言い始めたキシリトールガムでの虫歯予防効果ですが、実験的には効果が確認されているのですが、実際に生活の中でどこまで効果があるのでしょうか。検証しても明確な違いが現れないのです。そのため、キシリトール単体に頼るのではなく、糖質を制限する、フッ化物入りの歯磨剤を使ってしっかり歯磨きするなど複数の方法を併用するのがよいでしょう。

2)う蝕の母子感染を防ぐために,食器の共有は避けた方がよい
現時点で言える事はここまで!: 食器の共有を避けるなどの母子感染を防ぐ行動は、う蝕予防に重要でない可能性が指摘されている。

生まれたばかりの新生児には虫歯菌(ミュータンス菌)は生息しておらず、生後19ヶ月〜31ヶ月の間に主に家族から感染します。そのためスプーンなどの食器の共有は、控えるように言われてきたわけです。しかし細菌が定着するには、歯の状態、食事習慣、嗜好など様々な要因が関係しています。食器の共有は、間食などの生活習慣と比べると影響が少ないため、あまり神経質になる必要はないかもしれません。

3)インプラント治療後は、フッ化物配合歯磨剤を使用しない方がよい
現時点で言える事はここまで!: インプラント埋入患者さんにも、フッ化物配合歯磨剤の使用を推奨すべき。口腔内に天然歯が一本でもあるなら、フッ化物によるう蝕リスク低下の利益の方が、チタン腐食のリスクよりも大きい。

義歯に代わる治療法として、定着してきたインプラント治療ですが、インプラント体はチタンが使用されています。その理由は強度や耐腐食性、生体親和性に優れているからですが、フッ化物によって腐食が生じる事が指摘されてきました。30年近くたった現在まで、腐食によるインプラントの破損の報告はされていません。そのためフッ化物による影響は極めて少ないので、残っている歯のう蝕リスクを下げるためにも、フッ化物の利用は妥当だと考えられています。

書籍の中から3つのコラムを選んで簡単にまとめてみました。このようにひと昔前には通説のように流行した事が、最近の研究で変わってきています。企業や週刊誌等の新しい情報は、そのままうのみにしないで、いろいろな情報を調べてみるのもよいのかも知れません。

*参照 セルフケア指導 脱!誤解と思い込み (クインテッセンス出版)より